料理人だったら
100の言葉より働く姿で語りたい
10年ほど前にユニマット系列の店で2年半ほどシェフをし、SV兼総料理長となりました。肩書は何やら仰々しいですが、すべての店の料理を毎日チェックできるわけではありません。
自分がいる店舗で自分のすべき仕事をちゃんとすること、これが結果としてほかの店にいちばんいい形で伝えたいことを伝えられるんじゃないかと思っています。肩書以前に、まずは自分が任されている店をしっかりやっていなければ。毎日午前9時から店に入り料理人として真剣に働くことが、ときには100の言葉よりも説得力を持つこともありますからね。ですから業者さんとの折衝などはこちらでやりますが、それ以外は基本的に各店舗に任せています。
いろんなタイプの総料理長がいると思いますが、自分はずっとこのスタイルでやってきたし、今後もやっていくつもりです。それにもともとそんなに喋るほうじゃないんですよ。そして会社もこのスタイルを受け入れてくれているのだと思います。
この立場でよかったなと思うのは、いろいろな食材を試せることですね。新しい食材は最初に僕の所に来るので、料理人としてはやっぱり楽しいですよ、これは。業者さんに勉強させてもらっている部分もたくさんあります。
毎日来てもらって毎日食べてもらえるものを
総料理長としてほかに心がけていることは、毎日言っているんですが「おいしいの作れよ」。
当たり前のことですが料理の基本ですから。その当たり前のことのために技術と努力は不可欠ですし、料理を出すタイミングを逆算し、朝からどういう順序でどのような準備をしていく必要があるのかを、しっかり考えなくてはいけません。
僕はその点がしっかりできていないスタッフは厳しく叱ります。
それに小さなところでも手抜きは嫌なので、まかないだって真剣にしっかり作らないとそれも叱ります。もちろん褒めることもありますよ、料理人にとって最高の褒め言葉、「おいしい」って。
今の仕事では、斬新な料理を特別に作るのではなく、同じ料理を365日同じ状態で出すことに面白さを感じています。店舗ごとに雰囲気ががらりと異なるので、僕自身もそれら個性や形態の異なる店舗を経験できたことが非常に勉強になり、何でもこなせる自信がつきました。
その中でも、現在いる店舗が個人的には好きなんです。特別なものを特別な日に用意するのではなく、毎日来てもらって毎日食べてもらえるでしょう。レストランが非日常の場だとしたら、カフェは日常の場。僕はその日常でおいしい料理を提供したいんです。
10年後の自分のために、今やるべきことを
僕が今この会社にいる理由は、ここでの仕事が楽しいと思えるから。
もちろん長年勤めてきたので、辞めたいと思ったこともあります。けれどそれを上回るほどの魅力があったからこそ、今でもここにいるんでしょうね。それにそもそも、辞めたいときでも現実には目の前にこなさなくてはいけない仕事があるわけで、それを投げ出して辞めるのは、会社や周囲の人に対する裏切りになる。ひとりでここまで来たわけじゃないので、そういう恩も忘れてはいけません。
よくスタッフに言うんです、「今はやってることの意味はわからないかもしれないけれど、10年経ったとき、“あのときやっておいてよかった”と思えるから」って。
この会社は仕事の量も十分な量をこなせるし、量だけでなく質も高い、だから10年後の自分のためにはとてもいい会社です。地味な単純作業などの場合は不毛な気持ちになりがちですし、頑張ったときは早くその結果を見たい。けれど料理って、今日やったことが来週生かせるわけじゃないんです。1年続け2年続け、さらにそれをどんな場所でもすぐに確実にできるようでなければ、できるようになったとは言えません。「やったことがある」のと「できる」のは違います。
本人にやる気さえあれば、その辺のことをしっかり学べる会社だと思いますね。